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活動学外の活動内容

権利処理という仕事について2

株式会社テイクオーバル
AIPE認定 知的財産アナリスト 我妻 潤子

 10月発行の『上智大学FDNEWS』に掲載された前回の記事「権利処理という仕事について」で、著作権の役割・大学と著作権・許諾をとるという3点について説明しました。今回はより具体的に、「著作権者に許諾を取る」ということについて解説したいと思います。

2-2-3.具体的な許諾の取り方

 著作権のセミナーや研修を通して、「皆さん、許諾を取りましょう!」と伝えると参加者は、ほぼ困られた顔をされます。著作権には複製「権」や公衆送信「権」などがあり、それら権利の内容の解説に構えてしまうようです。確かに、90分の研修で権利の具体的な内容を解説するだけでは、受講者が権利処理を実践できるレベルの理解をするのは難しいでしょう。しかも、耳に残っているのはそのような専門的な言葉であるため、「許諾をとる=〇〇権の許諾をとる」と権利者に伝える必要があると理解されてしまうようです。

 しかし、権利者側も「その使い方は○○権で…」とすぐに言及できる人は多くありません。したがって、今回は、権利処理実務者がどのようにして許諾を取っているか、そのポイントを解説したいと思います。

2-2-4.許諾を取る時のポイント

1) 何をどのように使いたいのか

 使いたい資料は、どのようなものなのか?著作物なのか?著作物で資料番号等が公開されているときは、資料番号、作品名も通称ではなく、正式名称を依頼書に記載して下さい。またトリミングなど、改変を行いたいのか、資料全体を使いたいのかなども漏れなく記載し、連絡先の相手や権利者に、的確に伝えることが大切です。

2) どうして使いたいのか

 どういうプロジェクトで使いたいのか、どういう意図でその資料や著作物を使いたいのか、を明確にして相手に伝えると許諾は出やすい傾向にあります。授業内での利用については、権利処理は不要な場合が多いですが、学外での発表などの場合は権利処理が発生する場合があります。その時に自分がどうしてその著作物を使いたいのかという動機は許諾を得るのに大事な要素になります。

3) 具体的な利用について

 利用媒体によってポイントの違いがあります。ここでは、出版とインターネット配信について解説したいと思います。

出版など印刷物の場合
  • 部数…何部印刷するのか?
  • 配布対象者…誰に配布するのか?
インターネット配信
  • 配信期間…1ヶ月の利用なのか、1年間の利用なのか、無期限での利用なのか?
  • 配信方法…ストリーミング配信なのかダウンロードが可能な形式か?
  • 公開範囲…限定公開なのか、制限をかけない公開なのか?
  • コピーガード…コピーガードがかけられるのか?かけられない場合はウォーターマーク(透かし)などをいれるのか?

 以上のことなどを依頼書に明記して下さい。

4) その他

  • 使用料…利用に際して権利者へ使用料が払えるのかどうか、払えないのか?払えない場合は予めその旨を伝えましょう。
  • 動画などの場合…利用したい資料や著作物が動画の場合は、該当箇所と使用秒数を指定しましょう。動画の場合は、使用料が秒単位で決まっていることもあるので、伝えた方がスムーズに進みます。
  • 絵画などの場合…カラーで利用したいのかモノクロで利用したいのか?

 サンプルがあるならサンプルを添付すると権利者も判断しやすいでしょう。

2-2-5.まとめ

 「結構、細々しているな」と思ったかもしれません。1点ずつ許諾を取るとなると大変ですが、複数の資料や著作物の許諾を取るときはA4用紙1枚程度の「依頼書」にまとめ、申請すれば大変さも感じないと思います。

 今回は許諾をとるということについて解説しました。次回(最終回)は許諾を取らなくてもよいケースについて解説したいと思います。