• FD委員会概要
  • 活動
  • 教育活動支援情報

教育活動支援情報学生による授業アンケート

Good Practice 2017年度春学期

自主研究(グローバル課題研究):人間の安全保障と平和構築

東 大作(グローバル教育センター 准教授)

受賞のコメント

私は、2016年4月に上智大学に着任しましたが、2015年の秋に上智大学への赴任が決まった時、自分が教える教科について、当時グローバル教育センター長だった廣里恭史教授に最初にご相談したのが、前任校でも行っていた「人間の安全保障と平和構築」という連続セミナーを上智大学でも開催したいということでした。その際、ただ公開のセミナーを行うだけではなく、上智の学生さんが授業として履修した場合は、5回の連続セミナーに参加しつつ、それを基に自らの研究を行ってレポートを提出することで、単位も出せるようにしたいという希望をお伝えしました。

上智大学ではまだそうした枠組みの科目がなかったのですが、廣里先生やグローバル教育センターのスタッフの方々は私の希望を実現するために、色々と知恵を絞ってくれました。その結果、「自主研究(グローバル課題)」という全学共通科目を新たに立ち上げ、それを履修した学生は、私のガイダンスや、「人間の安全保障と平和構築」に関する基本的な講義を受けた後、一回2時間(火曜日の午後6時45分から8時45分)のセミナーに出席し、それを基に、それぞれテーマを決めて研究を行いリポートを提出することになりました。また学期の途中、私と履修した学生だけで集まり、学生同士のグループデイスカッションで、自分の研究課題について発表して、お互いに研究テーマについて語り合ってもらうことにしました。その時は、私も各グループを回って学生一人一人から研究課題の内容について話を聞き、少なくとも一度は学生一人一人に直接アドバイスするようにしました。

5回の連続セミナーの講師については、メデイア(NHKのディレクターなど)、JICA幹部、国連幹部、外務省幹部、そしてNGOの代表にお願いし、様々な角度からこの「人間の安全保障と平和構築」の課題について学べるようにしました。それぞれ講師の方はとても忙しい方のため、実際にセミナーが始まる半年前から交渉を始め、私が一人一人に直接お会いして、連続セミナーの趣旨を話し、ご協力をお願いして引き受けて頂きました。

その結果、2016年4月から7月まで行った最初の年の連続セミナーでは、毎回、上智の学生を始め、他大学の学生、市民、専門家やJICA、国連関係者などを中心に、150人以上の参加者が詰めかけ、2号館17階の国際会議場が毎回満席になりました。150人の参加者のうち、約半数の70人が「自主研究(グローバル課題)」を履修した上智の学生でした。(それ以外の方は、授業や単位とは関係なく、公開のセミナーに参加した人たちです。)

嬉しかったのは、比較的通常の授業の時はおとなしい方も多い上智の学生さんが、このセミナーにおいては積極的に手を挙げて、次々とよい質問を繰り出し、セミナーを盛り上げてくれたことです。そのため、どの講師の方々も、「上智の学生のレベルは高いですね」ととても感激されて、会場を後にされました。私も毎回司会をしながら、とても励まされる思いでした。そして、学期末に提出してもらったリポートも、その多くが素晴らしい内容でした。リポートでは、1)5回の連続セミナーのサマリー、2)教科書、拙著「平和構築」のサマリー、3)自ら選んだテーマについての研究リポートの三つを書くことを課し、一つ10枚に及ぶ長さでしたが、学生たちはとても熱心に取り組んでくれました。

一年目が満足いく状況だったこともあり、2年目の2017年度もまた連続セミナーを開催することにしました。今回は、10人の日本を代表する研究者と2017年3月に私の編著で出版した「人間の安全保障と平和構築」(日本評論社)についての出版記念シンポジウムを、10人の執筆者全員参加のもと行い、それを一回目のセミナーとしました。2回目は、広島の原爆について番組を作り続け、多くの国際的な賞を受賞しているNHKの右田千代ディレクター、3回目は、JICAの花谷厚・平和構築室長、4回目は、以前から親しくしており国際的な保健外交を率先して取り組んでいた塩崎恭久厚生労働大臣、5回目は、同じく旧知の中で、元外務大臣の玄葉光一郎代議士(上智大学卒業生)に講師をお願いしました。今回は90人もの学生が履修し、同じく毎回150人近い参加者がおり、会によっては午後9時を回る時間まで、熱い議論が続きました。

またこの一連のセミナーについては、必ず上智大学の先生にコメンテータとしてご参加頂き、私だけでなく多くの専門家からの意見も伺えるようにしました。また曄道学長や大塚副学長、藤村副学長、杉村副学長など大学の幹部の方にも冒頭の挨拶をお願いして、セミナーを応援して頂きました。

このようにして、上智に来てからの2年間で計10回行った連続セミナーの内容や結果については、セミナーの様子を伝える写真と共に、比較的詳しく上智大学のウェブサイトに掲載しています。こうしたセミナーの内容そのものが、上智大学の国際的な問題への取り組みを示すことになると思ったからでした。毎回、サマリーを作り、それを講師やコメンテーターの方から確認を取って、場合によっては加筆、訂正して頂いて掲載していくのは骨が折れることでしたが、そのことはこだわって続けています。以下のリンクで過去10回のセミナーの様子をまとめてご覧いただけますので、ご関心があれば、覗いてみて頂ければ幸いです。(毎回のセミナーの「実施報告」に、会の詳しい様子が述べられています。)

今回、こちらの自主研究(グローバル課題)「人間の安全保障と平和構築」連続セミナーが、学生評価によるGood Practiceを受賞したことは、とてもびっくりしました。ただ、上のような経緯で、色々と苦労しながら連続セミナーを授業として実施してきたこともあって、正直少し報われた気がしました。この連続セミナーの実施を応援して下さったグローバル教育センター長(廣里教授と現在は小松太郎教授)や、グローバル教育センターのスタッフの方々、そして冒頭挨拶やコメンテーターを引き受けて下さった上智大学の先生方、そして講師を引き受けてくれた方々に心より御礼申し上げます。

一方、私もそれ以外の3科目は普通の授業を行っていますので、そちらでも同じような評価を受けられるように、今後も努力しなきゃいけないなと思った次第です。

連続セミナー自体は、来年度以降も続けていくつもりです。「人間の安全保障」は上智大学の新たなブランド事業にも最近採択されました。継続は力なりですので、こつこつと連続セミナーを続けることで、グローバルな課題の解決を、学生と市民、専門家が共に考えていくプロセスを、地道ながら作り続けていきたいと考えています。

学生のコメント

  • 同じテーマ内の異なった分野で最前線で活動している方々の話であり、これは本には乗ってない情報として貴重かつとても良い刺激になった。教科書に沿った授業では、過去の勉強であり、現在から将来にかけて学ぶ方法は、このような形の授業でしかないと思った。毎回のセミナーで刺激を受け、自発的に研究を重ねることができる点もとても良い。
  • 授業の特徴として毎回、専門家の方をセミナーに招く授業スタイルは他の授業とはいい意味で差別化されていたし、先生もすごく親切だった。そして何よりも、現役の大臣のお話を伺い、質問を直接出来る授業は他にないと思う。事実沢山の大学や国際機関からも参加者が来ていた。素晴らしい授業でした。
  • 元々興味あった内容について、数回の講演を聞く機会を得ることができたため、自分自身でさらに学習し、知識を深めたいと思ったから。
  • セミナー受講をうけての自由研究リポートの執筆は珍しい授業形式でとてもアカデミックだと思いました。特に後半のセミナーでは、大臣方のお話を聞くことで、堅いイメージのあった官公庁への親近感がわきました。実際に平和構築に従事している方の話を聞きたいとは思っても、自分でそのお話を聞く機会をつくることは難しいので、今回のようなセミナーが継続的に春秋両学期で開講されるととてもいいと思います。ぜひ今度もこのようなセミナー式の授業を履修したいです。
  • セミナー形式が良かったです

講義概要

上智大学グローバル教育センターでは、2016年4月より、「人間の安全保障と平和構築」をテーマに、公開の連続セミナーを実施しています。セミナーには、学生をはじめ、国連関係者、NGO、専門家、市民の方々、誰でも参加頂けます。また上智大学に所属する学生は、この「自主研究(グローバル課題研究)」を履修し、5回の連続セミナーに参加して、最後にリポートを提出することで単位(2単位)も取得することができます。(もちろん、授業として履修せずに、自分の関心のあるセミナーのみ参加することも可能です。) 連続セミナーには、人間の安全保障と平和構築に関し、日本を代表する専門家やジャーナリスト、JICA関係者、政策決定者を講師として招待します。人間の安全保障と平和構築に関する歴史的な変遷、最新の動向、そして日本が果たし得る役割などについて話をして頂き、参加者と共に、今後の平和構築の課題や、あるべき姿について議論を深めていきます。

到達目標

本授業では、5回の連続セミナーに参加して、活発に議論を行いながら、自らの関心のあるテーマについてリポートを書き、今後の勉強や研究に活かしてもらうことが目的です。マスコミ、外交官、NGO、国連関係者、JICAなど、人間の安全保障と平和構築に携わる各界を代表する講演者の方々と直接議論を行うことや、セミナーに参加する、省庁や援助機関、NGOや市民の方々と交流を深め、ネットワークを形成し、将来の目標を達成するための知見を高めることも本授業の目的です。

Good Practice一覧へ戻る