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ニュース 各部門の活動 2022年度

2022年度 第5回ランチタイムフリートーク

主  催:
外国語学部
司  会:
幡谷先生
講  師:
木村先生
日  時:
2022年12月6日(火)12:45-13:20
実施方法:
オンライン
参加者数:
19名

概要

【講演】「似て非なる現象?−日本とドイツのやさしいことば(やさしい日本語/Leichte Sprache)」

 外国人には英語で話しかけるべきだ、ということが日本ではマナーとして語られることがある。しかしこの考え方の背景には、外国人は日本語ができないという思い込みがあるとも言える。実際には、外国人たちは英語で話しかけられることに困惑することもある。一方、全て日本語で話すことを難しく感じている外国人もいる。そこで昨今、「やさしい日本語」を使用するが注目されるようになった。日本語学習者に対して、やさしい、簡単な日本語を使用することで、日本語学習者との意思疎通がより円滑化する可能性があるということが、企業や大学でも認識されるようになっている。

 「やさしいことば」は日本でもドイツでも注目されているが、その内実は日独で異なっている。例えば、日独の省庁などが作成している公式ホームページをそれぞれ分析してみると、日本ではコロナに関する情報や在留支援に関する情報が、外国人を対象に、やさしい日本語で提示されている。一方ドイツでは、知的障害者や認知症の人のための情報提供に「易しいドイツ語」(Leichtes Deutsch)が利用されている。また、日本ではマナーとしてやさしいことばが使用されているのに対し、ドイツではやさしいことばの使用について法律で定められている、という違いもある。一方英語圏では、一般の市民に分かりやすく情報を提示するためにやさしいことばが使用されている。つまり、「やさしいことば」は、言語圏や文化圏によって異なった形で展開されている、ということが言える。

 この「やさしいことば」は、外国語学部の教育の中でどのように扱うべきだろうか。「やさしい日本語」を用いるなど、相手に合わせて日本語のレベルを調節するスキルは、言語能力としては「仲介能力」にあたり、外国語学部の学生も身に着けるべき重要なスキルであると考えられる。ドイツ語学科では、学生が留学生とコミュニケーションをとる際に使用できるよう「やさしい日本語の手引き」を作成している。このようにやさしい日本語を使用できるようにすることは、相手のレベルに合わせてコミュニケーションを取ることを促すなど、言語意識を高めることにもつながると考えられる。

 学生が留学生とコミュニケーションを取る際には、機械翻訳を用いることも多い。しかし、機械を用いて翻訳ができてしまうと、学生が外国語のことをわかった気になってしまう、また日本語と外国語の違いや日本と外国の文化の違いなどに気づきにくくなってしまうという問題がある。例えば、日本語の単語をドイツ語の単語に翻訳するとき、きちんと辞書を使って訳語を調べると、一つの日本語の単語に対して複数のドイツ語の単語が対応することがわかる(日本語の「かわいい」という言葉は場合によっては「きれい」という意味のhübschに訳すことも、「小さくて愛らしい」という意味のniedlichとも訳すことができる)。しかし、機械翻訳では訳語が一語しか出てこないため、「かわいい=〇〇」と覚えてしまうなど、言語を表面的にしか学ぶことができない。また、日本語の「かわいい」という言葉に様々な意味合いが込められているということにも気が付くことができない。機械翻訳は、コミュニケーションを取る際に便利なツールでもあるが、語学においては使い方に注意が必要だと言えるだろう。

【フリートーク】

質問① 日本語の「かわいい」という言葉は、海外でもkawaiiという形で使用されることがあるが、ドイツでも使用されているか。
→kawaiiという言葉は、日本に興味のあるドイツ人であればよく知っていると思うが、一般のドイツ人は知らない。

質問② 「可愛い」という言葉や、日本特有の「かわいいの文化」は外国語で説明するのが難しいが、ドイツ語ではどうか。
→「可愛い」という言葉や、日本特有の「かわいいの文化」はドイツ語でも説明が難しい。かわいいという言葉を和独辞典で調べると20個の訳語が出てくる。このように、ドイツ語では一対一対応で訳すことができないのだということに気づくことも重要であろう。

コメント① ロシア語の授業では、やさしいロシア語を聞いたり、話したりする練習や、やさしい日本語からロシア語に翻訳する練習などを取り入れている。また、「やさしい日本語」について、やさしい日本語を話す際には、難しい単語を使用しないだけでなく、敬語を使わない、短い文章で話すということも重要であると考えている。

コメント② 日本語の文をドイツ語に機械翻訳した訳文を、さらに日本語に機械翻訳をした場合、元の日本語の文とどのように異なるか、という点を学生に分析させると、学生の機械翻訳への意識が変わるという研究がある。
機械翻訳を使用すると正しい訳文が得られるかもしれないが、それでは言語の学習にはならない。翻訳の課題を学生に出す際には、単語を辞書で調べさせ、その結果を単語リストといった形で提出させるといった方法も考えられるが、この方法は学生への負担が大きく、また自由な学習を妨げてしまうといった問題もあり難しい。

コメント③ 自身も外国人として英語で話しかけられることがある。ブラジルでは、相手が外国人であるかどうか顔だけでは判断できないため、外国語で話しかけたりやさしいことばを使用したりすることはない。やさしいことばを「外国人」に対して使用する点がとても日本的だと感じる。

【司会者からのコメント】

 非母語話者に対して、当該社会で話される言語によってどのように必要不可欠な情報を伝えるか、というテーマは、今後ますます日常的な課題となってゆくことだろう。その意味で、講師のご研究テーマのひとつである「やさしい日本語」をどのように解釈し、使用するか、また国や地域でどのような相違があるかという議論は興味深かった。同様に、機械翻訳の使用をどのように教育の現場に取り込んでゆくかという点も、デジタル時代の今、特に本学部においては切実な課題であり、参加された先生方のご発言からも学ぶところが多かった。講師にはご専門領域の立場から、ランチタイムフリートークにふさわしい題材と議論の場を提供していただいたことに感謝申し上げる。

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